戦国遊戯
***** 玲子's View *****

藤吉郎がいなくなったあと、いつの間にか気を失っていたようで、気づけばまた、入り口の扉が閉ざされていた。

何かあったんだろうかと、様々なことを思い巡らせるが、こんな状況のせいか、考え付く先は、全て嫌な結末ばかりだった。

玲子はふっと、自分の腕を動かしてみる。手首にズキンと痛みが走った。手枷が外れることはなく、カチャッという音だけが虚しく響いた。

「藤吉郎さん、無事かな」

自分を必ず助ける、そう、言ってくれた。だが、それはかなり難しいことだとわかっていたし、何より、信長への反逆とみなされやしないかと、心配で仕方なかった。


正直、嬉しかった。
でも…


自分の存在が、周りに迷惑をかけているのが、痛いほどよくわかった。
そして、自分や、学の存在が、今。大きく歴史を変えてしまっているということも。


無力だ。
なんにもできない。


思えば、川中島での戦いの時も。謙信に拐われたときも。



何一つ、役に立たなかった。それどころか、心配をかけたり、手を煩わせたり。


「ははっ…」

思わず笑い声がでた。


そして。


涙が少し、こぼれ落ちた。
< 301 / 347 >

この作品をシェア

pagetop