戦国遊戯
どれくらいの時間がたっただろうか。丸1日たったくらいにも、全く時間がたっていないようにも感じられた。

ふと、カチャカチャという金属音が聞こえてきた。自分の枷の音ではない。ふと玲子が顔をあげると、出入り口の扉が開き、数人の兵士の姿があった。


…知らない人ばっかり。


藤吉郎はもちろん、学の姿もない。眉をひそめて、兵達の姿をみる。少しばかり、同情の色が伺い見えた。

「今から移動します」

その言葉に、玲子は何も答えず、ただじっと、兵の方を見ていた。

「…動かないでくださいね」

少しおどおどした様子で、玲子の手枷を外した。このまま、暴れて逃げてしまおうかとも思ったが、そんなことをすれば、ここにいる兵達が罰を受けるはめになってしまう。
玲子はおとなしく、兵の様子を見つめた。

奇妙な空気が場を包んだ。堪らなくなったのか、兵の1人が玲子に聞いてきた。

「…逃げ、ないんですか?」

聞かれて玲子は目を丸くした。

「お、おい!」

質問の内容にビックリして、別の兵が慌てて止めた。

「凄腕だって聞いたんだ。なら、俺達を殺して逃げるくらい、わけないんじゃないか?」

不安でたまらないといった表情を向けられて、玲子は口を開いた。

「逃げたら、あなた達に迷惑をかけてしまうから」

玲子はそういうと、少しだけ、切なそうな表情を浮かべていた。
< 302 / 347 >

この作品をシェア

pagetop