戦国遊戯
信長に連れられて来た先は、広い中庭だった。


時代劇とかのチャンバラシーンで、よく出てきそうな場所だなぁ…


砂利の敷き詰められた地面を、ボーッと見つめる。信長はその姿をみて、また少し笑った。

「なぜここに連れてこられたのか、わかるか?」

聞かれて、玲子は首を横にふった。すると、後ろから声がした。

「今から釣りをするんだよ」

声の主が誰か、玲子には簡単にわかった。この世界へ来てからというもの、何度も腹立たしい思いをさせられてきたのだから。
しかし、言われた意味はわからず、思わず聞き返していた。

「釣り…?」

振り向くことはしなかった。振り向けばきっと、また、あの嫌な笑みを浮かべている。そう思ったからだ。
「餌は君だよ」

言われて、玲子は思わず振り返った。勝ち誇ったかような笑みを、学は浮かべていた。
ぎりっと歯をくいしばる。できることなら、今すぐにでも殴りかかってやりたい。
玲子はぐっと堪えて、学を睨みつけた。

「…誰も釣れやしない」

そうだ。幸村も政宗も、ここへ来たことは知らない。藤吉郎が、万が一ここえきたとしても、言い訳なんていくらでもできる。

玲子は落ち着きを取り戻し、軽く息をついた。
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