戦国遊戯
一瞬、学の命令に、兵士達は躊躇した。対峙している相手には、慶次と藤吉郎がいる。なぜ、この2人に向かわなければならないのか。
戸惑いと、不信感だけがつのったのだ。
しかし、学の側には信長の姿がある。自分達の絶対的な主だ。理由も何もわからないが、主の命令は絶対だ。兵士達は、わぁっと3人に襲いかかった。

「やめて!!」

必死で声を絞り出す玲子。しかし、騒然となったこの場では、誰の耳にも届かなかったようだ。一気に数人の兵が襲いかかる。それを交わしたり、反撃したりして、兵が少しずつ倒れていく。


なんでこんなことを…


互いの命を守るためではない。かたや玲子を餌に誘き出され、多勢に無勢の戦いを強いられ、かたや理由もわからずに、仲間に刃を向ける。


なんなのよ、これ。


ふつふつと、玲子の中にまた、怒りが沸き起こった。

無理だとわかってはいたが、玲子は手首の縄を噛みちぎろうとする。何度も必死で縄を噛む。
その姿を、信長はただじっと見つめていた。その表情は、ただ、成り行きを見守る傍観者そのものだった。
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