戦国遊戯
そう呟いたとき、誰かが後ろから抱きしめてきた。玲子はそっと、手を顔からはずしてみる。痣と傷だらけの腕が、玲子をぎゅっと抱きしめていたのだ。

「だめだ。行かないでくれ」

この世界へ来て、何度も聞いた声。困ったときや辛いとき。何度も自分を助けてくれた声だ。

「お前がどこの世界から来たとか。そんなのどうでもいい」

震える声で、すがるように呟く。

「俺は、もう。玲子のいない世界など耐えられぬ」

ぎゅっと抱きしめられ、玲子はそっと目を閉じた。我慢していた涙が行き場をなくし、ぽろっと頬を伝った。

「ゆっきー…」

抱きしめているその腕を、そっと玲子は撫でた。しっかりとしたたくましい腕。暖かいぬくもり。この世界へ来て、まだそれほどの時が経ったわけじゃない。だけど、たくさんの人と出会い、優しさに触れ、この世界で生きていくことを考えたことだってあった。

「元の世界に、待っている者がいることもわかっている。だが…」

幸村の震える肩。伝わってくる冷たい雫。


今すぐこの手を握り返してあげたい。



ずっと、側に居たい。





離れたく、ない。




…だけど………




玲子はぎゅっと唇を噛み、必死で涙をこらえた。
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