戦国遊戯
呆然といなくなった学の場所を見つめていると、幸村がふらっと地面に倒れこみそうになった。玲子は慌てて、幸村の体を支えた。

「ゆっきー!しっかりして!」

額にはひどい油汗が浮かんでいた。顔色が悪い。玲子は難しそうな表情を浮かべながら、幸村をその場で横にした。


抜けば、血があふれ出てくる。


刀を抜くかどうするか、ものすごく迷っていた。抜けば確実に、ひどい出血が起こる。今はまだ、すぐに治療ができる環境でもない。できれば抜かない方が良いのかも知れない。でも、このままにしたままで移動するなど不可能に近い。

刺さった刀と、幸村の顔を交互に何度も見た。
幸村の苦しそうな表情に、玲子も辛くなる。

「医者を呼んでくる」

少し離れたところで声がした。駆け出していったのは、藤吉郎だった。玲子は藤吉郎の後姿に深く頭を下げた。

「れい…こ……」

うっすらと目を開け、幸村はふっと玲子に微笑みかけた。

「いい、喋らないで」

何かを言おうとする幸村に、玲子は首を横に振ってそれを止めた。これだけ深い傷を負っているのだ。これ以上喋らせては、幸村の体に障る。

しかし、幸村は玲子の制止など気にも留めず、手を伸ばし、頬にぺたっと触れてきた。玲子は困ったような表情を浮かべながらも、その手に自分の手を重ねて、そっと握り返した。

「ぶ…か…?」

かすれる幸村の声。思わず泣きそうになるのを必死にこらえて、幸村に飛び切りの笑顔を向けて頷いた。

「大丈夫。ゆっきーのおかげで、元気だよ」

自然と、幸村の手を握る力が強まった。
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