戦国遊戯
「火を」

信長は短く言葉を発し、命じた。兵士達も、それ以上聞かなくてもわかっているかのように、薪を持ってきては火を興し、明かりを絶やさないようにした。


どれだけの時間が経ったかわからなかった。
玲子にとっては、耐え難い、苦痛の時間だった。


ふっと、医者の手が止まった。側に立っていた助手も、肩をふっとおろした。

あたりに緊張が走る。


「ゆっきー…は…」

恐る恐る玲子が聞く。医者は額を拭いながら、息をふぅっとつくと、真剣な表情で答えた。

「とりあえず、一命は取り留めたはずだ」

その言葉に、玲子は思わず涙ぐむ。政宗も、ちっと舌打ちするものの、その表情には安堵の色が浮かんでいた。慶次は玲子の頭をぐしゃぐしゃっと撫で回した。

「だけど、意識が戻るかどうかは、彼次第だ」

そう言って、医者は幸村のほうをチラッと見た。玲子はこくんと頷いた。

「大丈夫だ。あいつは絶対に目を覚ますよ」

そう言ったのは政宗だった。玲子は驚いた表情を向ける。

「玲子を置いて、先に行くような奴じゃぁねぇよ」

にこっと笑って、慶次が続いた。

「助かると良いな」

藤吉郎が玲子に向かって微笑んでくる。零れ落ちそうになった涙を、ぐいっと拭うと、玲子は飛び切りの笑顔で頷いた。
< 318 / 347 >

この作品をシェア

pagetop