戦国遊戯
その叫び声を聞いて、慶次が玲子をひょいっと後ろから抱き抱えていった。信玄と謙信は、仕方がない、といったふうな表情で、2人でまた、酒を酌み交わしていた。

「あんな年寄りの相手ばっかしてねーで、俺の相手もしてくれや」

にかっと笑いかけてくる慶次。玲子は少し苦笑しながら、しょうがないな、と答えた。

飲みすぎたのか、少しだけ体が暑く感じていた。外に面した、小さな障子を開けて風を通してやる。

「気持ちいいね」

外に見える城下町をぼんやり眺めながら、呟いた。慶次が後ろからそっと体を重ねてくる。慶次の鼓動が聞こえた気がした。

「俺は、この街が大好きなんだ」

さぁっと冷たい風が、2人を撫でていく。慶次はそっと、玲子の腰に手を回して、自分の方へと抱き寄せた。

「なぁ、玲子」

「…なに?」

必死で平静を装う玲子。その様子に、慶次はふっと笑うと、またぎゅっと玲子を抱き締めた。

「本当に、俺のところへこないか?」

慶次の言葉に、玲子は少し戸惑った。


素直に嬉しいと思う。
だけど…



「ありがとう、慶次」

ゆっくりと、深呼吸をする。そして、ちゃんと答えなくては、と、慶次の方をきちんと向き、慶次の目をしっかり見つめながら、真剣な表情で続けた。

「慶次の気持ちは嬉しい。けど」

そこまで言うと慶次に口を塞がれた。温かい、慶次の唇の温もりが伝わってきた。

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