戦国遊戯
布団に入ったままで、体を起こしている幸村。玲子の顔を見ると、柔らかな笑顔を向けた。

「ゆっきぃ」

涙が止まらなかった。顔をぐしゃぐしゃにして、玲子は幸村に抱きついた。大きな声で、わんわん泣いた。

「心配をかけた」

すまなそうに謝る幸村に、玲子は首を横にふった。信玄が、玲子の頭をそっと撫でる。

「お館様…」

幸村は、頭を下げた。

「申し訳ございません」

そう言って、幸村は、ん?と首を傾げる。そして、がばっと顔をあげ、青ざめた表情で信玄を見た。

「な、なぜお館様がここに⁉」

ゲラゲラ笑いながら、信玄は幸村にデコピンをした。その後ろから、扇子で口元を隠して笑いながら、謙信が姿を見せて状況を説明した。

話をききながら、幸村はどんどん顔がひきつっていく。

「申し訳ございません」

また、頭を深く下げる幸村に、信玄はかまわん、と、笑って答えた。

「わしのことはよい。それよりも」

そう言うと、信玄は玲子の肩をさすりながら、幸村に目で合図を送った。幸村は無言で唸づいた。
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