戦国遊戯
「わしらは城の主に礼を述べてくる」

信玄の言葉に、玲子と幸村を除く全員が、部屋を出ていった。

(頑張れよ)

すれ違いざまに、藤吉郎が玲子に呟いた。玲子はこくりと唸づいた。

2人きりになって、玲子は少し緊張した。

「怪我はなかったか?」

幸村の言葉に、また、止まっていた涙が一気に溢れ出した。

「ばか‼」

命の恩人に向けて言う言葉ではなかった。が、どうしても止まらなかった。

「ゆっきーが死んじゃったら、どうしようって、ずっと不安で堪らなかった」

玲子の言葉に幸村は微笑みながら頭を撫でた。

「私には何処にも行くなって、元の世界に帰るなって言ってたくせに」

「すまなかった」

駄々っ子のように文句を言う玲子。その玲子の言葉を、幸村は一言一言、きちんと聞き、謝り続けた。

ありったけの文句を言い終えたのち、少しの沈黙が流れた。

そして。

玲子はとびきりの笑顔を幸村に向けた。


「お帰りなさい」

幸村も微笑んだ。

「ただいま」
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