戦国遊戯
警察で事情聴取をされたが、玲子は何も覚えていない、と、そう、答えた。
戦国時代にいたと言っても、誰も信じないだろう。
そんなことはわかりきっていたから、玲子はただ、記憶がない、と、そう告げた。

両親が警察に迎えに来てくれた。2人とも、ただ、お帰り、と言うと、その他にはなにも言わず、玲子を優しく抱きしめ、家へと連れて帰ってくれた。


『失踪事件の最後の一人、無事に保護』


日本中のメディアが、玲子のことを報道していた。相次いで失踪していた人物が、次々と遺体で発見されていたのだ。それが、最後の一人は無事に生きて発見された。それだけでも話題性と興味を十分持たせることができた。

日本中のお茶の間が、玲子の絡んだ失踪事件で持ちきりになっていた。



「へぇ…そんなことがあったんだ」

玲子の部屋で、お茶を飲みながら、希美が呟いた。今までの出来事を、かいつまんで希美に説明していたのだ。


「でもさ、れいちゃん。後悔、してないの?」


希美に聞かれて、玲子は少し苦笑いをした。

「正直言うとね?ゆっきーと一緒に、暮らしたいって思ったよ」

そう。最後の最後で、幸村が伸ばしてくれた手を、玲子は取ろうとしたのだ。
幸村と一緒に、自分の残りの人生を、戦国時代で過ごそうと思ったのだ。

「でも、結局。こっちに帰ってきちゃった」

寂しそうな顔をする玲子を、希美は少し複雑そうな顔で見た。

「私としては、嬉しいんだけどね。れいちゃんが無事に帰ってきてくれたから」

そう言うと、希美は玲子の頭をぽんぽんっと撫でた。

「れいちゃん、お帰り」

希美のその一言に、玲子は頷いた。



「ただいま。希美」
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