戦国遊戯
行きは歩いていたせいもあるが、あんなに時間がかかったというのに。


馬ってすごい。そう思いながら、馬から下りた。馬の鬣を撫でて、ありがとう、と呟いた。馬は、佐助に引かれて、馬小屋へと連れて行かれた。


幸村の部屋まで連れて行かれた。幸村と向かい合った状態で、座っている。無言の状態が、すでに数分経過していた。

「あの、心配かけてすいませんでした」

頭を下げる。幸村は何も言わない。

「その、きてくれて本当に助かりました。ありがとうございます」

また頭を下げた。が、やはり幸村は何も言わない。


なんなんだ?謝ってもお礼を言っても返答なしって。でも、怖いから文句も言えない・・・あうぅ・・・


恐る恐る幸村の方を見た。幸村は、何か言いづらそうな顔をしていた。

「・・・な、なに?」

びくつきながら聞いてみた。幸村は、深いため息をひとつついた。
しばらくの沈黙の後、幸村はボソッと何かを言った。だが、声が小さすぎて、聞き取れなかった。

「え、なに?」

もう一度聞き返した、幸村はため息をついた後、再度口を開いた。


「お館様が、玲子を戦に連れて行きたいとのことなのだが」


一瞬、何を言っているのか、意味がわからなかった。

「はい?戦??」

幸村は無言で頷いた。

「何日か後に、上杉軍と川中島で戦がある。それに、玲子を連れて行きたい、と、お館様が申すのだ。もちろん、断ってくれてもよい。戦など・・・よいものではないのだから」

幸村は下を俯いた。
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