戦国遊戯
「私の生きている時代では、今の私の格好はごく一般的な格好で、珍しくもなんともない。この間見せた、楽器だってやつ。あれも、ほとんどの人が持っているもので、楽器なんかじゃなく、遠く離れた場所でも話ができるようにするための道具なの」

自分の説明で、どこまで伝わるのかがわからないが、とにかく、必死で伝えた。自分はここに本来、いるべき人間ではないと、元の世界に帰るための手がかりを探すために、戦に行くことを承諾したのだとも。

「私には、元の世界に、お父さんやお母さん、友達がいるの。元の世界に帰らなきゃいけないのよ」

ぐっと手に力がこもった。

「最初は、夢だと思ってた。けど、どんどんどんどん、これは夢なんかじゃなく、現実なんじゃないか。そう思えてきたの」

深呼吸をひとつした。

「きっと、信じられないだろうけど、これが、私がこの間口にしたことの真実」

ふぅ、と息をついた。幸村は、混乱しているようだ。無理もない。


しばらくの沈黙の後、口を開いたのは幸村だった。

「なぁ、玲子。玲子が未来から来たというのであれば。お館様がどうなるのか。もしや知っているのではないのか?」

「!!!」

「なぁ、教えてくれ。お館様は、天下を統一することができたのか?頼む、教えてくれ!」

多分それは、ルール違反だろう。
そして何より、真実を口にしたときに、果たして。幸村がどんな行動に出るのかがわからない。

今いる世界が、仮想空間だとしても。

だとしても、もしも、自分が思っているような状況以上の、何か不思議な現象が起こっていたとしたら。未来を口にしたときに生じる歪みは、きっと。想像もつかない大きな物になるだろう。そして、それを告げた私自身もきっと。大きな代償を払うことになるだろう。

そんな気が、した。
< 83 / 347 >

この作品をシェア

pagetop