戦国遊戯
「それは、答えられない・・・」

「なぜだ!?お館様の身に、何かあるのか!?」

「そうじゃなくて。今ここで、これから何が起こって、どうなるのか。それを話してしまったら、これから起こる全てのことが変わっていく。未来が、変わっちゃう・・・」

幸村は黙って私の話を聞いた。

「例えば、よ?」

幸村の目をじっと見つめた。

「ある戦があって、その戦は武田軍が負けたとする。それを私があなたに教える。きっと、そんな情報は、信玄にだって教えてあげたいと思うでしょうね。そして、信玄に伝える」

「うっ・・・」

言葉が続かない。

「そうなれば、当然、作戦も何もかも、変えていくでしょう?そうしたら、どういうことが起こると思う?私が今生きている世界と、歴史が変わってきてしまう。それだけは、絶対にしてはいけない。だからきっと、幸村さんたちにとっての未来を口にしてはいけない。私がこの世界にいるうえでの最低限のきまりだと思うから」

「・・・・・・・・・」

たぶん、こんな言い方をしている時点で、武田軍がどうなるのか、なんとなくは想像がついたかもしれない。


よく考えてみれば、ゲームとはいえ、ワールドヒストリに入った時点では、ストーリーモードの場合、その人物になりきるため、もともとの歴史の記憶は一切なくなっている状態だ。普段はないはずの記憶を持ち合わせている。この状況事態が、いつもと違うんだから、うかつに歴史を口にするのは、やっぱりよくないだろう。



未来が変わる。



素敵な響きにも聞こえたが、今の私には、とても恐ろしいことのように思えた。
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