戦国遊戯
「玲子、入るぞ」

中に声をかけて入った。そこには、脇差を手に、舞を踊る玲子の姿があった。

「―――――・・・・」


美しい。


言葉が出なかった。ただただ、美しいと、綺麗だと思った。


「あ、幸村さん」

舞を止め、こちらに気づいて声をかけてきた。

「あぁ、すまない。玲子、その舞はどこで?」

「え?舞?」

玲子は首をかしげていた。

「あ、もしかしてさっきの演舞のことですか?」

こくんと頷く。

「あれは、昔、興味があって。いろいろ調べて、独学で学んだんです。正直、どこまであってるのかよくわかんないんで、人前でやったことはないんですけどね」

テレながら答える玲子。
女性に対して、美しいと思ったのは、初めてだったかもしれない。

「そうか・・・」

言葉が続かなかった。


「あの、何か・・・?」

玲子に聞かれて我に返った。
忘れるところだった。

「いや、ひとつだけ聞きたいことがあって」

「・・・なんでしょうか」

玲子は少しつらそうな表情をしていた。なぜか胸が苦しくなった。

「いや。たいしたことではないのだが、とても重要なことで」

ふぅ、と息をついて落ち着く。

「玲子は、お館様の敵ではないのだな?」
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