誰かが言った、狂ってるって。
だけど、どうしてだろう。
満ち足りているはずなのに涙がこぼれ出した。
ポロポロと静かに。
あなたの呼吸がだんだん弱くなり、今はもう吸うことも吐くことも止めてしまった。
鼓動も弱くなりもう響かなくなった。
あなたと触れ合ってるところから私の体へ伝わっていたはずなのに。
そして、トクトクとあふれ出していた血の流れも止まってしまった。
血の色が変わっていく。
私の服の上で赤から黒へ。
私が欲しかったあなたの全てが手に入ったような気がした。
でも何かが違う。
私が欲したあなたはこんな姿じゃない気がした。
違う違う違う。
こんなんじゃない。
私が欲したあなたはいつも力強くギターを奏でてた。
いろんなことに興味を持って活動してた。
自信ありげな表情で颯爽と歩く様に見とれてた。
そして私には優しく語りかけてくれた。
そうだ。
私が欲したあなたは生きてるあなただ。
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