誰かが言った、狂ってるって。
さっきまで私と重なり合ってたあなたは、全く動かなくなってしまった。
私を優しくのぞき込んでくれた仕草が、何度も頭の中で繰り返される。
その場に崩れ込んでいるあなたとその光景がぐちゃぐちゃになって、今見てるものが現実なのかどうか混乱してきた。
ああ、今見えてるものは何。
分からない。
だめ、ちゃんとあなたを見なきゃ。
今この時のあなたを見ないと。
意識をはっきりさせ、目を見開いて焦点をあわせた。
さっきまで、ぎゅっと握ってくれたあなたの手が力なくうなだれてるのが見えた。
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