【短編集】現代版おとぎ話

「ねーえー。」

「んー?」

「ほら。」

「わっ。」



力いっぱい、鞄から取り出したピンクの箱を投げつける。

それをきちんとキャッチしてから、あなたは驚いた目で私を見る。



「くれんの?」

「もちろん。」



毎年あげてるけどさ、ねぇ気づいてる?

ピンクと赤にしたのは今年が初めてなんだよ?

毎年義理にしか出来なかったチョコレート、今年は本命なんですけど。

「サンキュ。」なんて、みんなに見せる笑顔くれないでよ。



「お返し、何がいい?」

「あたし相手にしかあげられないものー。」



毎年そう言ってるじゃん。

そうすると、決まってあなたはこういうんだ。



「好きだぜ。」

「知ってる。」



知ってる。

いつも見てるって言ってるじゃない。



「あたしも好き。」

「知ってるっての。」



知ってる。

いつも言ってるもんね。



煮え切らない関係。 一歩進みたい関係。

でも、あなたが選んだ“あたししかもらえない「好き」”だってわかってるから、

少しくらいこれでもいいかな。なんて。

貴方の最高のパートナーの座、そう簡単に人に渡したりしないんだからっ。



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