【短編集】現代版おとぎ話
じわりと涙が浮かんだ。

泣いちゃだめ。泣いちゃだめ。

だって、私が悪いんだから。








部屋にはいると、自分の机に向かった。


私いっつもやってることがある。

それは、先生に手紙を書くこと。

「ありがとう」と「ごめんなさい」

それと、ずっと言えない言葉。




―――「好きです。」




不器用な私でも、言葉にならきっと出来るから。

毎日、毎日、満足がいく手紙が書けるまで挑戦してる。

未だに一回も書き上げてないけどね。



叶わなくたっていいの。

先生に伝えたいだけだから。

だから、ずっとずっと、「部屋には入らないでね」って言って、

手紙を書くの。



私がずっと心に溜めてきた気持ちを、

不器用ながらに言葉に乗せて、

通じるといいなって願いを込めて、

一目惚れしたピンクの便せんに、

一文字一文字丁寧に、

少し大人びたワインレッドで、

手紙を書くの。



気づいて欲しいけど、気づいて欲しくない。

気づかれたって、先生は私の気持ちに応えてくれるわけがないから。

秘密がばれたとき。

それが私の恋が散ってしまう瞬間。




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