【短編集】現代版おとぎ話
ギギ、と重い音を立てて屋上に続く扉を開けた。
風に髪を靡かせて、フェンスによりかかる彼女。
俺はつかつかと歩み寄って、「ほら」と集めた紙を突きつけた。
彼女は一瞬目を瞬かせた後にっこり微笑んで
「反則しなかったんだ。」
と嬉しそうに笑った。
肩で息してる俺見りゃ、一目瞭然じゃねーか。このやろう。
「すっげー長いイバラの道だったんですけど。」
「でも来てくれたじゃん。」
「ったりまえだっつーの。」
俺は彼女の隣のフェンスに寄りかかる。
「お迎え、俺でよかった?」
「もちろん。王子様予約してからイバラの奥に閉じこもったわけだし?」
彼女の笑みは夕焼けを反射して、キラキラ輝いていた。
それから、跳ねるようにフェンスから身体を離す。
シャンと金属音が鳴った。
彼女は俺の前に来るとにっこり笑う。
「ほら、ゴールは?」
「はぁ?」
「キスしてくれなきゃ、この部屋から出れないんですけどー。」
「アホか。」
予約をする? キスをせがむ?
今時のオーロラ姫は、随分積極的になったもんだ。
王子がヘタレていくこのご時世、そんなもんなんかなぁ。