世界の灰色の部分
ひさしぶりの学校。
今日からわたしは高校3年生。
校門に入れば、数週間前とまったく変わらない空気が流れている。
仲のいいもの同士で、笑い合う生徒たち。
水商売の店がひしめきあう夜の世界を黒という色に置きるとしたら、このまっとうな昼の世界、学校はきっと白だ。
教室に入ったら、名簿順の座席表が黒板に貼られていた。
クラス替えはしていないからそこに並ぶ生徒の名前に変化はないのだが、担任の名前が書かれている欄には、見慣れない名前が載っていた。
そっか、そういえば去年度までの担任は定年退職したんだった。
川上進一。
やっぱり知らない。ということは、新任か。
まぁ、どうでもいいけど。
わたしにとってこの白の世界は、ただのハリボテの背景。
思い入れなんて欠片もないから、教師などどんな人間でも関係ないし、友達だっていない。
ここを卒業さえしてしまえば、それでいいのだ。
わたしは自分の席の脇に鞄をかけると、体育館へ向かった。

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