オレンジ 〔実話〕



愛しさが込み上げてきて、ただその勢いに任せて電話をかけた。

あたしも悠一の声が聞きたくて、好き過ぎて胸が締め付けられるんだ。



『さやか‥』

悠一はワンコールで電話に出た。
第一声にあたしの名前を呟くように呼んだ。
すごく寂しそうな、声のトーン。



「悠一‥ちゃんと電話かけたぞ!ワンコールで出るなんてすごいね」

あたしは、わざとおどけてみせた。いきなり、《どうしたの?》なんて聞いたらいけないと思った。



『電話‥ごめんな?さやか、ありがとう。俺さ、お前の声聞くと安心するんだ』


ハハッって少し照れ笑いしてるのが、電話でもわかる。
キュンときた。
期待してしまうような一言だ‥



< 119 / 126 >

この作品をシェア

pagetop