テディベアはしゃべらない
なぜ、彼は私の手を引いていくのでしょう。

なぜ、私は今日知り合ったばかりの男の子に手を引かれているのでしょう?

なぜ、なぜ……なぜ?

疑問なんて山のように積み上がり、泉のように溢れてきます。

けれど、落ち着いて私。慌てずに。そして焦らずに。

あとから訊けばいいんです。笑顔を使って、「なんの用ですか?」って。

とても簡単な答えに行き着くのはとても早いことで、彼が私を引っ張っていくのも、とても速いことでした。

「逢わせたいヤツがいる」――そう言った彼は私を、部室長屋へ案内しました。

私は帰宅部です。なぜって、むなしくて、疲れるじゃありませんか。

「まひるちゃんの笑顔はぎこちないね」なんて言ってくれる人は、あの時のあの子以外、いないんですから。

学校で、教室で期待して裏切られて、これ以上むなしさを味わえって言うんですか。

そんなのはイヤです。
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