テディベアはしゃべらない
圧倒的……ですけど、こんなにファンシーな部室に普段からいるなんて……どんな人でしょう。

考えてみたいところですが、

「だいたい壮馬は身勝手なんだ。僕にめんどうは押しつけて、自分はつくつく針を動かしてるだけだし」

「あの」

考えてみたいところですが……

「あの頭の中は絶対、綿とかビーズとか、スッカスカなものしか詰まってないに違いないね。つまりおつむが軽いんだ、うん」

「あのっ」

「今度がつんと言ってやんなきゃな、副部長として」

「あのっ!」

「ん? なに?」

「ん? なに? じゃねぇよ、あほうが」

低く、なまめかしい声が響いて、彼が、固まりました。

首に油を差したほうがよさそうな動きで振り返った先に、男子がひとり。

黒い髪、黒い目、険のある表情。一目見て、カラスのような人だと、そう感じました。なにか、大きな箱を小脇に抱えています。

栗毛の彼が散々言っていたのを意識してか、彼はわかりやすく「ふん」と鼻息をひとつ。

体中が錆びようとしている森山くんの横を抜け、とても静かに椅子へ座りました。
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