テディベアはしゃべらない
なにが、楽しくて?

その質問が、湯船に落ちたしずくのように波紋を広げました。

なにがも、なにも――むしろ、なぜそんな質問をされたのでしょう?

どうして、あんな質問をされたのでしょう。

――もしかしたら、彼と接していた時、私は少し呆気に取られていましたから、上手く笑顔を作れてなかったかもしれません。

失敗ですね。私としたことが、失敗です。

たぶんきっと、私がきちんと、そう「まひると一緒にいると笑顔になるね」と言われるような笑顔ができていなかったに違いないです。

湯船の中でぐっと伸びをひとつしました。

もしまたあのカラスさんと話す機会があったら、今度こそ、私の笑顔で彼も笑顔にしてみせましょう。

ね。きっと、私ならできるでしょう。

だってみんな、笑顔が好きなんですから。
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