テディベアはしゃべらない
あの日あのとき、私の笑顔を一度破壊したあの子に、そっくりなのでした。

「アナタ、も――私に言うの?」

だから、

「ねぇ、アナタも……アナタも私に言うの!? ねぇ!!」

あの時あの子に訊ねられなかった思いが、間欠泉のように爆発しました。

朝から大声をあげてしまったせいで、私を中心に、クラスが静まりました。

あたかも、湯船に波紋の広がるように。

私は、普段にない、奇異の目を向けられていました。

ですが、

「答えて」

彼への追及を、やめられません。やめられるはずがないんです。

クラスのみんなが――「なあ、高村どうしたんだ?」「知らね」――ざわざわと――「ねぇ、あの相手の男子、だれ?」「アイツだよ、森山。いつも追っかけられてる」――それぞれの疑問を――「まひる、なにかあったの?」「え~、あの森山とぉ?」――口にします。

その一切を無理やり、聞こえていないフリをしていると――

「行こう。ついておいで」

それは昨日の繰り返し。

ダンスへ誘われたような気がした次の瞬間には、私はもう彼に引っ張られていました。

クラスのいっそう、ざわめく声を背中で聞きながら。
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