テディベアはしゃべらない
けれど、おかしいんです。

そのテディベアは、そんな扱いを受けながら、笑顔なんです。

――違う。

笑顔の仮面を、被っていました。

それは、それはまるで――

「おいどうした高村。――なんだ、このクマが怖いのか? かわいそうなのか? なんとか言えよ」

「そ、……そのクマ……」

なんとか、言わなくてはと思って紡いだ言葉も、私の体も、なぜか震えていました。

だって、どうして、どうして、

「――笑って、るの……?」

笑顔の仮面なんて、被っているんでしょうか。

その仮面じゃあ、だれもだれもだれひとりとしても、助けてなんかくれないのに。

「ふっ」

と、とても愉快そうに、壮馬くんが笑いました。

「そりゃ、笑顔でいるのが楽しいからだろ」

「――っ」

昨日、私が答えた時と、同じ口調で。

そんな……
そんな……
そんな扱いをされて、宙吊りで、笑顔でいるのが楽しいなんて……

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