テディベアはしゃべらない
「そん、な、……そんなわけないよ!!」

反論の声は、

「楽しいはずなんてないよ! 宙吊りにされて、がんじがらめで、窮屈で……! それで笑顔なんて、ほんとは楽しいはず」

「さあ、そいつはどうかな」

途中で、遮られました。

壮馬くんの手が、

「コイツは、仮面だろうが本心だろうが、笑ってるんだ」

箱のふたを、

「お前、この仮面の下が、泣いてるとでも言うのか? 見えもしないのに?」

掴みました。

そしてゆっくりと、

「たとえコイツの仮面の下が」

「ぁっ」

ふたが閉められて、

「泣き顔だろうとしても」


テディベアの姿が、

「俺にもお前にも、だれにだって、笑顔にしか見えやしない。そう――」

箱の闇に、

「楽しんでるようにしか、な」

消えていく!

「ゃ、やめてッ!!」

叫ぶことしかできなかった私は、ガトンと鈍い音で閉まった箱の中で、真っ暗闇に落とされたテディベアと同じ気持ちになりました。
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