テディベアはしゃべらない
「テディベアはしゃべらない。たとえ嘘をつかれようと、たとえ罵声を浴びようと、たとえほほえまれようと、たとえ呼びかけられようと、テディベアはしゃべらない。自分の気持ちは伝えられない」

「……、……」

「だからせめて、お前は言葉で伝えろ。ぎこちない仮面で、自分から気持ちを隠して、箱の中に閉じ籠もるな


そして彼は、私の手を取り、立ち上がらせました。

「ほら、アイツん助け出してやるといい」

言われて、私は言う通りにしました。

テディベアに絡まる糸を丁寧にはずして。

そっと、この手に抱き留めました。

「仮面を被ってぎこちなく笑うのは、テディベアでもできる」

そしてそっと取ってあげた仮面の下は、涙のしずくをひとつ頬に伝わせた、けれど、笑顔でした。

どこか、「やっとわかってくれたね」と、嬉し泣いているような。
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