テディベアはしゃべらない
「だからお前は、笑いたい時に笑え。泣きたい時に泣け。仮面を被るのは、テディベアがやってくれる」


彼の言葉に耳を傾けながら、私はこくりと頷き、

「ありがとう……」

手にしたテディベアを、私の胸に押しつけました。

心臓を、取り返したような気分で。

自分から自分を隠してしまう、不器用な私の分身だと思って。



テディベアはしゃべらない。

私がどれだけ泣いても、しゃべらない。

けれど今は……とてもこの子と心が通っている――そんな気がしました。



< 32 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop