テディベアはしゃべらない
静かになると、友達のひとりが「へぇー」と呟きました。なにかを、思い出しているように、視線がふわふわと。
「森山ってさ、名前は知ってたんだけど、アイツだったんだ。知らなかった」「あ、あたしも。顔は初めて見たよ」「噂通りのマスクだったね」「ねー」
「……みんな、知ってるの?」
それらの口ぶりからすると、彼はかなり有名なようです。
私は、名前すら記憶していませんでした。
だって自分の笑顔を演じるのにいっぱいな私が、どうして、日頃話もしたことのない人を知っているでしょう。
彼女達は、「知らないの?」と目を丸くしさせた後、ぼそぼそと井戸端会議を始めました。
そして私には、
「いやいや、まひるは知んなくってもいいよ?」
「そうなの?」
「そーそ。別に知んなくってもいいことだもん。森山、なんか変だし」
「そっかあ。ならいいかな」
「うん、いいのいいの」
そんな、いっそ、適当な言葉が返ってきました。
それは、本当に私は知らなくてもいいことなのでしょうか。
世の中には、知らなくていいこともたくさん、ありますから。
もっとも、私の世界はいつも、知りたいことのほうが、零れていってしまうのですけれど。
「森山ってさ、名前は知ってたんだけど、アイツだったんだ。知らなかった」「あ、あたしも。顔は初めて見たよ」「噂通りのマスクだったね」「ねー」
「……みんな、知ってるの?」
それらの口ぶりからすると、彼はかなり有名なようです。
私は、名前すら記憶していませんでした。
だって自分の笑顔を演じるのにいっぱいな私が、どうして、日頃話もしたことのない人を知っているでしょう。
彼女達は、「知らないの?」と目を丸くしさせた後、ぼそぼそと井戸端会議を始めました。
そして私には、
「いやいや、まひるは知んなくってもいいよ?」
「そうなの?」
「そーそ。別に知んなくってもいいことだもん。森山、なんか変だし」
「そっかあ。ならいいかな」
「うん、いいのいいの」
そんな、いっそ、適当な言葉が返ってきました。
それは、本当に私は知らなくてもいいことなのでしょうか。
世の中には、知らなくていいこともたくさん、ありますから。
もっとも、私の世界はいつも、知りたいことのほうが、零れていってしまうのですけれど。