ざわめきのワルツ
「さてと。亜衣ちゃん、カシスソーダくださいな」

「可南子さんが飲む分?」

「もちろん」

可南子さんはバーなんて経営してるくせに、甘いお酒が大好き。

ウイスキーとか日本酒とかは、あまり好まない。


薄い紫色の液体。

とん、とカウンターに置くと、可南子さんは一気に三分の一くらい喉に流し込む。

「今日も弾かないの?」

「弾けないのよ」

「嘘。本当は弾けるくせに」

「亜衣ちゃんは、歌わないの?」

「…歌えない」

「嘘」

グラスについた赤い口紅。


似た者同士なのよ、私達。

そう言って、可南子さんは大人の余裕でにっこり笑った。
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