嫌いなアイツの10の命令
あたしは教室の扉をノックした。
いつもなら、そんなことしないで勢いよく開けちゃうのに。
なんだか、この教室が涼雅の心の中で、
あたしは無理矢理立ち入っちゃいけないような気がした。
ノックの音で、涼雅はあたしを振り返った。
「おー、お疲れ」
夕日に照らされた涼雅は、すごく綺麗だった。
白いワイシャツをオレンジに染めて、
机に腰掛けて振り向いた横顔に、不覚にもドキッとしてしまった。
「…なに、声も出ないほど疲れたのかよ?」
涼雅の声で我に返る。
「あっ、ううん、楽しかった!コンクールに出られるかもって言われたし!」
「マジで?すげーじゃん」
涼雅はいつもとは少し違う笑顔を見せて、カバンを持って立ち上がった。
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