お嬢様重奏曲!R
「………チェックメイトだ」
「ムグッ!」
「わあ! 御言さん。チェスお強いんですね」
 これでチェスは御言の三勝無敗となった。
「なんでこんなに強いのよ! 騙したでしょ! お兄ちゃん!」
「騙したとは人聞きが悪いな。強いとは一言も言った覚えはないが?」
「ムムムッ! こうなったら私が勝つまで勝負してもらうからね!」
 その場に立ち上がり渚は腰に手を当て、ビシッと指差した。
「渚! 人に指を指すものじゃありません。それに御言さんにご迷惑じゃないですか」
「何言ってるのよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんも参加するんだからね」
「俺なら構わないさ」
 チェス盤を片付けいそいそと、次のゲームの準備をしている渚を見て御言は苦笑した。
「ごめんなさい、御言さん。人見知りする渚がこんなにも人に懐くのは珍しくて」
 葵も目の前で楽しそうにしている渚を見て、思わず表情を綻ばせた。
「それじゃまずはウノで勝負だからね! 負けても恨みっこ無しだよ」
 それから三人は勉強そっちのけで、ゲーム三昧になっていった。
 勝率は御言が全勝で一位、葵が一敗で二位、渚が二敗で三位となった。
「本当に御言さんはお強いんですね」
「そうだよ。反則的に強すぎだよ」
 渚に迫られるも御言は冷静に、眼鏡の位置を直した。
「ただの確率論に過ぎない。上手く当て嵌まれば誰でも勝てる」
「簡単に言ってくれるよね〜」
「でも凄いです。さすがは御言さんですね」
 喜び手を叩いている葵を見て、渚は意味ありげに「…ふ〜ん」と一人と頷き微笑んでいた。
 そんな渚の視線に気付き、御言が尋ねたが渚は何でもないと首を振るだけだった。
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