お嬢様重奏曲!R
「良かった。じゃあお兄ちゃんにお願いがあります」
「何かね?」
「お姉ちゃんの事を見捨てないで、これからも見守って下さい」
「…見放す、とは?」
「昔、ちょっとね。あの趣味のせいで、嫌な事があって」
「なるほどな。深くは詮索しないでおこう。では俺からも一つ聞かせてくれ」
「な〜に?」
「彼女は自分の趣味は家族にも秘密だと言っていた。にも関わらず、なぜ君が知っている?」
 御言の質問に渚は思わず苦笑してしまった。
「あれね? ああ見えてお姉ちゃん、抜けてるところがあるから。バレバレだよ。私以外にも志乃さんも知ってるよ。まっお母さんとお父さんにはまだばれてないようだけどね」
「なるほどな。留意しておこう」
「じゃあ改めてお兄ちゃん」
 渚は御言の正面に座ると、深々と頭を下げた。
「どうかお姉ちゃんと仲良くしてあげて下さい。もうお姉ちゃんが悲しい涙を流しているのを、見たくないんです。だから私はお姉ちゃんを泣かせる人は絶対許さない。それがお兄ちゃんだとしても」
 渚の目は真剣で葵の事を深く考えている事が、ひしひしと伝わってくるのが自覚出来た。
「安心しろ。彼女が俺から離れる事はあっても、俺から離れる事はまず無いだろう。俺は…いや俺の一族は特別だからな」
 御言はふと左目辺りに触れる。
「特別? そんな事言ったらうちだってそうだよ、お兄ちゃん」
「そういう意味ではないのだがな。ともかくそこら辺は安心したまえ」
「フフッやっぱりお兄ちゃんは良い人だね。私の目に狂いは無かったみたい」
 渚の表情が明るくなり、歓喜を上げて御言の胸へとダイブしたのだった。
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