ディーダラス2064
「どうしたの…」
背後から声がした
聞き慣れた声だった
ただし夜から午後にかけての一日の付き合いだ
それでも聞きなれたと認識したかった
それが正直な想いだ…

忘れられない声だ
正直 そう思った

この気温の中、オレンジのセーターとジーンズ
軽装備で買い物から帰ってきたばかりのミディが立ちすくんでいた。

「謝ろうと思って…この間のこと…」
「そんな風に思っていたの…?」

彼女は笑い出したい衝動を抑えている感じだった。


ホットミルクは身体を充分に温めてくれる
少なくとも最近摂らなくなったアルコール類よりかは
ずっと健康の味がする

そういえばミルクには精神安定の効果もあるらしい。


「謝らなければならないのはあたしのほうなのよ…」

ミディは少し落ち着いた様子で
魚介類のたっぷり入った炊き込みライスの仕込みを終えた手で
カオルのくつろいでいるソファの向かいの席に腰をかけて
カオルの持っているマグカップとおそろいのそれを自分の口に運んだ


「あたしは情報局の人間だった…」
「情報局…?」
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