-恐怖夜話-
「えぇー、雨降ってるよぉ?」
不平たらたらで、返事をする。
「もうやんだから、行っといで!」
取り付く島もない母の言葉に、私はしぶしぶ体を起こして、窓の外に視線を走らせた。
確かに母親の言う通り、今まで降っていたはずの雷を伴った強い雨は、もうすっかり上がっていた。
窓の向こうの空には、濃紺の夜の闇色の中に、雲の切れ間から差し込む夕日の残照が、妙に紅い縞模様を描き出している。
うわぁ。
何だか、気味の悪い色だなぁ……。
子供ながらに、そう思った。