-恐怖夜話-
私から事の次第を聞いた母が、懐中電灯を片手に様子を見に行ったが、それらしいモノは無かったと言う。
「ははぁ。そりゃあ、人魂だなぁ!」
仕事から帰った父が母からその話を聞いて、何故か嬉しそうにそう言った。
「ゆう、人魂見たか!」
『がはは』と笑いながら、大きな手で私の頭をガシガシかき回す。
「あれ……やっぱし、人魂かなぁ?」
あの瞬間の恐怖を思い出しながら呟く私に、父親はやっぱりニカニカ笑い顔を向けて、
「だっぺー。人魂だっぺなー。あそこの山には『墓』があるからなー」
と、明るくのたまった。