-恐怖夜話-
ある日の昼下がり。
自宅の八畳の居間でのこと。
対面式のキッチンで昼食の後片付けをしていた私は、
いつものように、ビデオデッキにビデオテープを乱暴に出し入れしている五歳の娘に向かい、ため息混じりに声をかけた。
「麻巳ちゃん。そんなにガチャガチャしちゃ、ビデオ、壊れちゃうよー?」
「え!? ビデオ、こわれちゃうの、ママ?」
と、当の娘は、目を丸くして驚いている。
「うん、そう。大事大事にしないと、バキッってビデオが壊れちゃうのよ」
「えー、やだぁ!」
「じゃあ、大事大事にそおっとしてね」
私の言葉に、娘は、幼稚園で覚えたばかりの『良いお返事』、右手を耳の脇にくっ付けて「はい!」と元気に笑顔を見せた。