-恐怖夜話-

『ポータブル・トイレって、何だか音が響きそうで、何となく恥ずかしいよね』


レンタカーを借りるときに、私が言ったセリフを思い出しているのに違いない。


この人は、こういう風に、人をからかって遊ぶような所があるのだ。


「まだ大丈夫。後の掃除が大変だから、なるべく使いたくないし……。いよいよの時は使うから」


「はいよ、奥さん。ちびんないでね」


「ちびんないよ!」


だから、その笑い止めなさいってば!


ん、もう!


親しき仲にも礼儀あり、なんだからね。


と、武士の横顔を一睨みし、頬を膨らましながら前方にぼんやりと視線を移したその時だ。


チラチラと、何かが視線の端っこに引っ掛かった。

< 173 / 358 >

この作品をシェア

pagetop