-恐怖夜話-

――なんだか、がっかり。


もうちょっと、小綺麗なアパートを期待していたんだけどなぁ。


建設会社の現場監督をしている父の仕事の都合で、とある山あいの町に引っ越ししたのは高校二年生の夏休み直前。


社宅として使われている、古ぼけた四階建てのアパートの302号室。


ここが、父・母・娘の私。


三人家族の新しい住まいだった。


「そう言いなさんな、3DKで月一万五千円だぞ。文句は言えないよ。まあ、今度の所も二、三年位だろうから、ガマンガマン」


大きめの荷物を抱えた父が、苦笑しながらアパートに入っていく。


ううっ、二、三年かぁ。


少なくても高校卒業までは、もう転校しなくてすむかぁ。


引っ越し自体は、色々な所に行けて楽しい面もある。


だけど、せっかく仲良くなった友達とサヨナラするのは、何度引っ越しをしても慣れそうにない。

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