-恐怖夜話-
十月も半ば。
秋が足早に過ぎて行き、大分冬の気配が強くなったころ。
私、佐藤弘恵(さとうひろえ)は、これから始まる二十歳にして経験する初めての一人暮らしに、心を躍らせていた。
やっと就職先が決まり、長いアルバイト生活に終止符を打つことができたのだ。
今日は母と一緒に、一人暮らしに必要な家財道具を購入するため、新居のアパートの近所にあるリサイクルショップに買い出しに来ている。
テレビ・洗濯機・コタツにガスコンロ。あらかたのものは揃った。あと、必要なのは――。
「ねえ。この冷蔵庫、いいんじゃない?」
母が指をさしたのは、白い冷蔵庫。
ツードアで、サイズも一人暮らしには丁度良いコンパクトなものだ。