-恐怖夜話-
「ごめん……」
病室に見舞いに来て第一声。
真次くんはポツリと呟いて、ベットに横たわる私に申し訳なさそうに頭を下げた。
「なんで謝るの?」
私は、妙に穏やかな気持ちでいた。
あれだけの怖い目に遭いながら、我ながら神経が太いと感心しないでもないけど、不思議と恐怖心は残っていないのだ。
『憑き物が落ちた』とは、もしかしたらこんな感じを言うのかも知れない。
それと、たぶん、目の前に居るこの人の存在のおかげだと思う。
真次君はきっと、私の体験を『夢でも見たのだろう』とは言わないはずだ。
私は、一人じゃない。
そう思えるのは、きっと幸せな事なのだと思う。