-恐怖夜話-
「大丈夫だと思ったんだ。あの時、坂田さんは何も見えない様子だったから、問題無いと思った。俺の考えが甘かったよ」
私には、真次くんの言っていることが理解出来た。
『あの時』とは、真次くんが部屋まで送ってくれた時、電柱を指さした時のことだ。
「あの時、石崎くんには、何が見えたの?」
私の質問に、真次くんの瞳に迷いの影が揺れる。
話そうかどうか迷っている、そんな風に見えた。
私がその瞳を真っ直ぐ見詰めると、少し眉根を寄せた真次君は、意を決したように静かに口を開いた。
「俺には、形として見える訳じゃないんだ。ただ、黒い影のように見える」
「……幽霊なの?」
「たぶん」
そっか。
真次君、やっぱり霊感小僧だったんだ。