-恐怖夜話-


「ありがとう」


「え?」


お礼を言う私を、真次君のキョトンとした黒い瞳が見詰める。


「石崎君、私に『念仏を唱えろ』って教えてくれたでしょう? たぶん、そのお陰で助かったんだと思うから……」


そう言うと、真次くんは顔を伏せて、鼻の頭をポリポリと掻いた。


これって、照れてるんだろうか?


と、妙に嬉しくなる。


「ねえ、そう言えば念仏って、凄い効果があるんだね。びっくりしちゃった私」


まさか自分に霊能者の真似事が出来るなんて、有る意味そっちの方が驚きだったりする。


まあ、霊感皆無だと思っていたのに、幽霊に首を絞められるなんて体験をしたこと自体が、そもそもビックリ・ポイントなんだけど。

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