-恐怖夜話-
「ああ……あれ。あれは別に、念仏じゃなくても構わないんだ」
「え?」
何でも、構わない……ものなの?
私は、首を傾げた。
「大事なのは、どんな邪念にも絶対負けないって思う『強い気持ち』なんだ。だから、別に念仏でも真言でもそれこそ、アーメンでも構わない」
「そうなの?」
「ああ。確かに言葉って言うのは大事だけど、その言葉を操るのは人の心だから……。形よりも、本質が肝心なんだ。強い魂は、言葉に強い力を宿し、それは強い武器になる」
真次君はそこで言葉を切って、
「なんてね。実は俺も人からの受け売りなんだけど」と、何かを思い出したように柔らかい笑みを浮かべた。