-恐怖夜話-
疲れている。
仕事のストレスと昨夜の訳の分からない、夢。
ダブル攻撃だ。
「どうした香織(かおり)? 溜息なんかついて。腹でも空いたのか?」
運転席で、ハンドルを握る彼氏の東悟《とうご》が、ふざけたセリフと一緒に心配気な視線を投げてくる。
父親が宮司になったため、神社の孫息子から跡取り息子に昇格した東悟とは、私が高校生二年の夏から恋人同士になって、もう八年が経つ。
今では、お互い良いところも悪いところも知り尽くして、気心の知れた心地よい関係を築いていた。