-恐怖夜話-
「あ、それ、脇にドア開き防止用のフックが付いているんですよ」
不意に、後ろから飛んできた男性の声に思わずドキリとして、母と二人、同時に振り返った。
「ほら、ここにフックがあるんですよ。きっと、小さいお子さんがいた家庭で使われていたんでしょうね」
黄色い太陽のマークが入った、店のロゴ入りの妙に派手なエプロンを付けた中年の店員さんが、ニコニコ営業スマイルを浮かべて立っていた。
彼は、笑顔のまま、二人の間から手を伸ばして、冷蔵庫の扉の上部に付けられていた黒いフックをカチャリと外す。
「どうぞ。中もご覧になって下さい。とてもお買い得な商品だと思いますよ」
勧められるまま、私は冷蔵庫のドアに手を掛けた。