-恐怖夜話-
「意味? うーん……」
東悟は視線を前方に向けたまま、眉間にシワをよせた。遠くを見詰める瞳がすっと細められる。
でもすぐ、諦めたように肩をすくめた。
「知らないな。歌がどうかしたのか?」
やっぱり、東悟は知らないか。
「ううん、別に良いの。ちょっと気になっただけだから」
「ふぅん」
まあ、自分も似たようなものだから、文句は言えない。
沙希ならこう言うの詳しいんだけど。
私は、親友の細面の和風美人顔を思い浮かべた。
地黒で猫っ毛の私とは違って、抜けるような白い肌に大きな黒目がちの瞳。
さらさらストレートの長い髪は、女の私から見てもとても綺麗で、まるで『かぐや姫』のようだと思う。
またその美しさが鼻につかないのは、ひとえにその性格の良さ故だ。
私にとっては、大切な幼馴染みで、何でも話せる一番の親友だった。