-恐怖夜話-

「妹の早苗ちゃんもまだ見付からないのに、姉妹二人揃ってなんて、新庄さんお気の毒に」


ため息混じりに呟く母の瞳には、同じ娘を持つ母親としての同情と共感が色濃く表れていた。


そう。


沙希の妹の早苗ちゃんは十三年前、六才の時に行方不明になっていて未だに見付かっていない。


当時は『神隠し』だと、テレビや新聞でもさんざん騒がれたものだ。


それが今度は沙希まで。


沙希に良く似た面差しの、沙希のお母親のか細い哀しげな面影が胸を過ぎる。


情報が欲しい。


大事な親友が行方不明だと言うのに、全くと言っていいほど情報がない。


少しでも詳しい情報を得るのに一番良い方法は――。


「お母さん、私、沙希の家に行って来る!」


私のセリフに、母は驚いたように目を丸くした。


「香織、よしなさい! 新庄さんちは――」


「行って来るよ!」


何もしないで鬱々と待っているなんて性に合わない。


こういうときは、行動有るのみだ。


母の制止を振り切った私は、玄関に荷物を置いたま飛び出した。


徒歩で十分。


走れば5分も有れば着くだろう沙希の家に向かって、私は一目散に駆け出した。

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